第2回:人材獲得コストを正確に把握する①
2019.12.11
前回のコラムでは、「人材不足の状況を分解する」というテーマでお伝えしました。大きな問題については、具体策を考えることができるまで小さく分解してみるという視点が大切です。今回はもう一つの大切視点である「人材獲得コスト」について考えてみたいと思います。
さて早速ですが、皆さんは「一人当たり獲得コスト」を正確に把握しているでしょうか?先を読み進める前に、皆さんの施設(法人)でのコスト感を思い浮かべて考えてみてくださいね。
さあどうだったでしょうか?セミナー等でこの質問を受講される方々にぶつけてみると、面白いことに回答はだいたい次の3つに当てはまります。
そしてこの中ではAを回答される方が圧倒的に多いですが、次点はBです。Bも計算したわけではなく、印象としての回答です。ではこの印象の根拠をよく聞いてみると、「求人広告の枠単価」につながってきます。さらに聞くと1回掲載したくらいでは全く採用ができないので、結果としてBよりももっと高額になっていたということです。
この回答をいただいた方々に人材獲得に要した費用は1年間でいくらですかと聞いても、ほとんど回答をいただけません。
さて何が言いたいかといいますと、ほとんどの法人が人材獲得に正味だれだけのコストをかけたのかを把握できていないということです。コストを正しく把握しておかないと、効果がないものに費用を掛け続け、年間通じて振り返ってみると膨大なコストになっていたという事態になりかねません。
人材採用のためのソリューションを目にしても、金額が50万円100万円という単位を見た瞬間に高い!となって拒絶してしまう。しかし実際は年間で1500万円近くを支払い結果が出ていない。そんな法人が残念ながら多いのです。
人材獲得コストは人手不足だからこそ高騰しています。だからこそ昔からの感覚ではなく時代に合わせてアップデートしなければなりません。今後人材獲得コストが下がる可能性はほぼありません。今までの感覚をまっさらにし、新たな採用の尺度を導入しましょう。
ではまずは人材獲得費用の算出の仕方を明確にすることから始めましょう。
人材獲得コストは「直接費用」と「間接コスト」の2つにわけることができます。
「直接コスト」は
などのいわゆるイメージしやすいコストのことを指します。
一方で「間接コスト」は
などのことを指します。担当者の人件費は考えている以上に出て行っていることが多いものです。
どちらも大きなコストではありますが、今回は「直接コスト」を中心に考えてみたいと思います。
多くの介護事業者で出てくる採用(人材獲得)に関するコストを挙げてみると
① ハローワーク・自社HPからの採用
② 求人広告(ナビサイト)
③ 説明会、フェア等への出展
④ 職員からの紹介(リファラル採用)
⑤ 紹介業者
⑥ 派遣業者
というものが代表的なものです。
順を追って説明をすると、
①ハローワーク・自社HPは無料です。もちろん制作するのにコストもかかっていますが採用に特化したものではないので、コスト換算をしなくてもよいでしょう。言い換えれば、ここで人材が取れれば一番良いものです。最近はハローワークが復調してきているように感じます。ポイントはまた連載の中でお伝えをしますね。
②求人広告はオーソドックスな求人手法といえるでしょう。コストをかけて、掲載枠を購入し、そこに自社の求人情報を載せる。最近では紙媒体よりもWEBでの求人広告をだすところも一般化してきました。最新のものでは、テレビコマーシャルでおなじみのindeed(インディード)なども有名です。こちらは求人広告というよりも、本質は目につきやすい場所を買うというものですが、なにかを介して応募させるということでは変わらないでしょう。
ここでのコストは出稿費用ということになります。そしてほとんどの場合1回で来ないことが多いですから、年間通じての1人あたり採用コストを計算するのが良いでしょう。
③説明会・フェアなどへの出展もオーソドックスですが、そもそもフェアや合同説明会そのものに人が集まらなくなってきているのが難しいところです。
ここでのコストは出展に伴い発生する、出展費用、資料準備(デザイン、印刷、ノベルティなど)の費用です。
④職員からの紹介も最近では制度化し、紹介入社に対して紹介した人、された人両方に報酬を支払うところも出ています。(人材紹介に当たらないようご注意ください)。一定の信頼がある人が採用でき、もちろん定着もするということでツールを作成するなど戦略的に取り組んでいるところもあります。
ここでのコストは、紹介した人、された人に支払う紹介料が当てはまります。
⑤紹介業者は非常にシンプルな計算です。入社した場合に発生する紹介料が人材獲得コストです。確実に人員カウントができるものの、最近では質や定着の課題が見えてきています。
最後に派遣としたいところですが、派遣職員の獲得コスト計算方法については少々複雑となるため、次回に回したいと思います。
まずは今回の内容で、各項目で昨年度、総額と一人当たり獲得コストを計算してみてください。

11月5日より毎週第1・3水曜更新!連載コラム 福祉介護の人材採用、定着、育成の教科書
執筆者紹介福祉介護の人材採用、定着、育成の教科書株式会社ビジテラス 代表取締役 本田新也
介護事業コンサルタントとして多数の介護事業者に人材戦略コンサルティング(採用・定着・育成)や社会福祉法人向けガバナンス強化コンサルティング等、多くの経営課題の解決にあたっている。各種公演・セミナー等でも活躍中。 【著書】(共著)「あの介護施設には、なぜ人が集まるのか ~サービスを感動に変える18の物語~」PHP研究所 (著者)糠谷和弘
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